地域電子マネーとは?デジタル地域通貨のメリットや成功事例、導入ポイントを解説
地域電子マネーは、自治体や商店街という単位で発行する特定の地域でのみ使用できるデジタル通貨です。キャッシュレス決済やポイントチャージとしての利用がメインですが、その他にもさまざまな機能があります。本記事では、地域電子マネーのメリットや各地域での事例を紹介しながら、導入するためのポイントについて解説します。
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地域電子マネーとは?デジタル地域通貨の概要
地域電子マネーとは、特定の地域内でのみ使用できる地域通貨をデジタル化したもので、デジタル地域通貨とも呼ばれています。
広く普及している他のキャッシュレス決済と同じように、対象店舗でスマートフォンを二次元コードにかざすことで決済ができます。その地域ならではの特典を付与するなど地域の魅力を発信することで地域経済の活性化促進にも役立ちます。
地域電子マネー(デジタル地域通貨)を導入する自治体が増えている背景
時代の移り変わりにあわせて自治体や地域コミュニティで地域電子マネーを導入しやすい環境が整ってきました。
その背景について解説します。
スマートフォン・インターネットの普及
スマートフォンとインターネットが普及したことで、老若男女問わずスマートフォンでネットショッピングやキャッシュレス決済を利用するようになりました。スマートフォンを使ってのインターネット利用率は68.3%に達しています。その結果、アプリで簡単に利用できる地域電子マネーも広がりを見せています。
参考:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/html/nd111100.html
地域電子マネー(デジタル地域通貨)の導入・運用コストの削減
デジタル化により、地域通貨の導入と運用コストが大幅に削減されました。
紙のクーポンやポイントカードを印刷・配布するためには高いコストがかかりますが、デジタル地域通貨であればスマートフォンアプリ上で配布できるため、手間やコスト面での負担を軽減することができます。
つまり、初期費用はかかるものの、長期的なランニングコストを抑えられるため、地域電子マネー(デジタル地域通貨)を導入する自治体や商店街においておいては、持続的に運用することが可能となりました。
デジタル化推進に関する国からの支援
これまで地域電子マネー導入の足かせとなったのは、導入時の初期費用でした。
ところが、ここ数年、デジタル技術の普及を目指す国からの支援が積極的に行われるようになりました。
代表的な政策に「デジタル田園都市国家構想」があり、この構想の一環として、地方自治体がデジタル化を進めるための交付金の支給があり、これが地域電子マネーの導入を後押ししています。
参考:https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/digitaldenen/about/index.html
地域電子マネー(デジタル地域通貨)の導入事例
各地域で発行される地域電子マネー(デジタル地域通貨)には、それぞれの特徴があり運用方法も異なっています。
ここでは、実際にデジタル地域通貨を発行している自治体の事例を5つ紹介します。
- さるぼぼコイン(岐阜県飛騨市)
- MORIOペイ(岩手県盛岡市)
- ハチペイ(東京都渋谷区)
- いたばしPay(東京都板橋区)
- めぶくPay(群馬県前橋市)
さるぼぼコイン
「さるぼぼコイン」は、岐阜県飛騨市で2017年12月から運用が開始されたデジタル地域通貨です。
飛騨信用組合によって発行されており、飛騨・高山の1,900店舗以上が加盟しています。
また、スマートフォンアプリを無料でダウンロードすることで誰でも簡単に利用できるため、飛騨市民の約4人に1人が利用しています。広く普及した背景には、「さるぼぼコイン」で提供している以下のサービスが挙げられます。
- 地域のさまざまな買い物やサービスに利用できる
- 市県民税や水道料金の支払いに利用できる
- ふるさと納税や移住者へのコイン進呈
- プレミアム商品券の配布
- 加盟飲食店におけるさるおぼコインでのみ購入可能な裏メニューの提供
- 差異が情報や交通情報の配信
加盟店の多さに加え、行政との連携によって買い物以外でも利用できるサービスを提供していることや、「さるぼぼコイン」でのみ楽しめる裏メニューで地域外の利用者をひきつけていることが成功の要因と言えるでしょう。
参考:https://www.hidashin.co.jp/coin/
MORIO Pay
「MORIO Pay」は、盛岡商工会議所、盛岡市、地域商店街が出資して設立した盛岡ValueCity株式会社が運営するデジタル地域通貨です。
地域経済の活性化を目指して2021年に導入され、市内約500カ所の加盟店が参加しました。
使い方も簡単で、スマートフォンアプリ「MORIO Pay」でキャッシュレス決済を利用すると、100円につき1ポイントが貯まります。
また、「MORIO Pay」導入以前から運用されていた「MORIO-Jカード」のポイントを「MORIO Pay」へ移行できるようにしたことで、カードからアプリへの切り替えを促すことができています。
それ以外にも盛岡市では1億円の予算を投じてチャージ金額の30%を還元するキャンペーンを実施。地域外の消費者が「MORIO Pay」にチャージし盛岡市で消費することで、盛岡市の経済活性化にも成功しています。
現在は、盛岡Value Cityが持つ「MORIO Pay」の利用データや人流データを活用した新たな取り組みもスタートしています。生活者インサイト把握やデータ分析を行い、地域経済のさらなる活性化に向けた事業展開につなげていく狙いです。
参考:https://morioka.yomsubi.com/
ハチペイ
渋谷区のデジタル地域通貨「ハチペイ」は、2022年11月から始まった区内で使えるサービスです。
渋谷区の産業観光課が主導するこのプロジェクトは、地域の活性化とキャッシュレス決済の普及を目指して導入され、現在は区内の約1,200店舗が加盟店として登録されています。
「ハチペイ」の特徴の一つは、独自アプリにPokepayの決済基盤を組み込んでいることです。
Pokepayは電子マネーの発行コストが低く、チャージ方法も豊富です。
クレジットカード決済やセブン銀行ATM入金にも対応しているほか、独自の取り組みとして専用チャージ機を区役所や区内の関連施設に設置しています。
また支払い時の即時ポイント還元や、マイナンバーカードを使った区民認証によるデジタル商品券購入時のプレミアム還元、ふるさと納税の返礼品としての「ハチペイ」ポイント配布など、多彩な施策を展開しています。
プレスリリースから約半年で利用者数8万人の利用者獲得に成功しています。
参考:https://www.hachi-pay.tokyo/
いたばしPay
「いたばしPay」は東京都板橋区が支援するデジタル地域通貨で、板橋区商店街振興組合連合会と板橋区商店街連合会が運営しています。
物価高や新型コロナウイルスの影響で売上が減少している区内事業者を支援するために、2022年10月に運用が始まりました。
加盟店舗向けには簡単に導入できる販促キットが提供され、中小企業や個人事業主の負担を軽減する工夫がとられています。
また、普及活動として20〜30%のポイント還元キャンペーンを定期的に実施しており、「いたばしPay」を使うことでお得に買い物ができることから地域内外の多くの利用者を獲得しています。
さらに「いたばしPay」は単なる決済手段にとどまらず、健康と経済を結びつける取り組みにも利用されています。
2023年9月には、1日の歩数や食事の記録に基づきポイントが付与される「いたPay健幸ポイント」制度がスタートし、区民の健康意識を高めることに成功しています。
その他にも、公式キャラクター「いっペイたくん」を活用したコンテンツやグッズ展開、省エネ行動を行った方を対象にポイントを付与するなど、ユニークな取り組みも行っています。
今後も外部機関と連携し、消費者がポイントを獲得できるようなイベントを実施していく予定のようです。
めぶくPay
前橋市は、共助型未来都市「デジタルグリーンシティ」開発の一環として、めぶくグラウンド株式会社と連携し、電子地域通貨「めぶくPay」を導入しました。
市内キャッシュレス化を進めることで、DXに対応する都市の実現を目指しています。
「めぶくPay」は比較的新しい地域電子マネーで、2023年12月20日にスタートしました。当面の間は登録加盟店の決済手数料を市が負担することになっていることから、加盟店も増加中で、約840店舗が登録しています。
また利用者の登録時には一定ポイントを付与、さらにその中から抽選で1万人に1万ポイントを付与するキャンペーンを実施することで、市民への認知向上と普及に努めています。
「めぶくPay」の特徴は、地域独自の電子ポイント「めぶくポイント」の運用と、公的給付金の電子化をしている点です。
前橋市は出産・子育て応援給付金などの公的給付を「めぶくPay」で支給することで、市内経済の循環を高める政策を行っています。
また登録者に割り振られる「めぶくID」を利用することで、取得した利用情報を地域で管理・分析し、将来的には行政サービスや新規ビジネス創出への活用が期待されています。
地域電子マネー(デジタル地域通貨)の導入時のポイント
自治体や商店街で地域電子マネー(デジタル地域通貨)を導入する際に、押さえておきたいポイントや注意点についてチェックしておきましょう。
加盟店が導入しやすい設計を行う
地域電子マネー(デジタル地域通貨)を普及させるためには、多くの加盟店に参加してもらう必要があります。そのため、簡単に導入できる設計や仕組みを用意しましょう。
例えば二次元コード決済を活用することで、決済端末の導入コストを抑え、店舗の負担を軽減できます。
また、ポスターやチラシ、POPなどの販促キットを運営側で提供し、店舗が手間をかけずに宣伝できるようなサポートも有効です。
導入にかかる負担を少しでも軽減し、店舗の運営に集中できる環境を整えることが大切です。
インセンティブを設定する
利用者を増やすために、お得にお買い物ができるようなインセンティブを設定するのも良いでしょう。地域の独自性を活かすことで認知度を高めていくことができます。
地域電子マネーの利用促進として一番効果的と言われているのは、ポイント還元キャンペーンです。コストはかかりますが、付与したポイントは地域内で消費に利用されるため、一定の経済効果も見込めます。
先ほど紹介した「さるぼぼコイン」の事例のように、地域通貨でしか購入できない商品を提供することで地域外の利用者の流入につなげることができます。
消費者が利用しやすい仕組みを設計する
消費者がストレスなく地域電子マネー(デジタル地域通貨)を利用できるよう、使いやすい仕組みを導入しましょう。
継続的な利用を推進するためには、多くの人が普段から利用しているコンビニエンスストアや銀行ATMでのチャージに対応するなど、手軽にチャージしてもらえる機会を創出することが重要です。
またアプリ以外でも物理カードを提供することで、スマートフォンの操作に不慣れなユーザー層にも広く訴求できます。
利用にあたって起こるトラブルや、問い合わせに対してスムーズに対応できる窓口も用意しておくと良いでしょう。
利用用途を複数用意する
複数の利用用途や仕組みを考えることで、地域電子マネー(デジタル地域通貨)の特性を最大限活用することができます。
例えば、行政や外部機関と連携し、ボランティア活動など地域が推進する活動へ参加した人に対し特典やポイントを付与することで、地域コミュニティの活性化を図ることも可能です。
また、利用情報を収集、分析することで、地域サービスの改善や地域に貢献する事業の創出に役立てることができます。
地域電子マネーを単なる決済手段に留めず、地域活性化の一手段としての活用を検討してみるのも良いかもしれません。
中長期的な視点で取り組む
地域電子マネー(デジタル地域通貨)を普及させるためには、中長期的な視点でプロジェクトを計画しましょう。
補助金だけに依存せず、行政ポイントや外部サービスとの統合や連携を図ることで、地域ならではのプラットフォーム構築を目指します。
都度利用データを蓄積し、デジタル通貨のシステムを提供する企業や、マーケティング部門と連携を深めながら長期的な運用を行うと良いでしょう。
地域電子マネー(デジタル地域通貨)の将来性
東京への一極集中が問題視される中、地域経済の活性化を目的とした地域電子マネー(デジタル地域通貨)は今後さらに重要性を増すことが予想されます。
地方でも積極的にデジタル技術を活用することで、地域内での消費を促し、新たなサービスやイノベーションが生まれるきっかけを作っていきましょう。
また、地域電子マネー(デジタル地域通貨)は地域住民のつながりを強化し、コミュニティの結束を高める役割も担うことも可能です。
まだまだ利用者数が少ないことや、利用できる店舗が限られているなどの課題もありますが、大きな可能性を秘めているといえます。
地域電子マネー(デジタル地域通貨)の導入ならバリューデザインの「独自Pay」
バリューデザインの「独自Pay」は、デジタル地域通貨導入に最適なソリューションを提供しています。
プリペイド式電子マネーの発行に加え、ポイント付与やデジタルギフトの発行などが可能です。
属性情報などを活用し、さまざまな施策が行えます。
バリューデザインは、これまで1,000社以上の独自Pay発行を支援しており、導入の相談からサービスの開始までワンストップでサポートしています。
まとめ
自治体や商店街などにおける地域電子マネー(デジタル地域通貨)は、うまく利用促進することで、単なる決済手段というだけでなく、地域内での経済活性化、交流活性化を推し進めることができる非常に効果的な手段です。行政と連携することで、各種税金の支払いや給付金の受け取りにも対応できるようになり、今後も地域電子マネー(デジタル地域通貨)と連動する多くのサービスが誕生するでしょう。
導入の際には政府から交付金を受け取れる制度もあるため、うまく活用して地域の独自性や魅力を活かした電子マネーを作ってみませんか。